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考察\n今回の検討でNCBP、特にIncaは単球・大食細胞系細胞に時間及び濃度依存性に細胞死を誘導することが確認できた。この細胞死誘導は一部はcaspase-3,4,7の活性化を伴っていたことから、アポトーシスを介している可能性が示唆された。しかし細胞死にはアポトーシス、ネクローシス、オートファジー等、多様な様式があり、またアポトーシスとネクローシスの両方を介する細胞死や、necroptosis等の機序も報告されていることから、厳密な細胞死の機序の解明には更なる解析が必要と考えられた。顎骨壊死の発症機序は2013年時点で不明である。一方顎骨壊死の病理像では感染性骨髄炎に矛盾しない所見やバイオフィルムの関与が確認されている。加えて遷延性歯周感染症保有症例での頻度高い発症が知られている。また最近骨塩減少性病変に対し、NCBPとは異なる薬理作用を示す抗RANKL抗体を投与しても、同様に遷延性歯周感染症保有症例での顎骨壊死の頻度高い発症が報告された。歯周ポケット内には単球・大食細胞系細胞、リンパ球、形質細胞、顆粒球等多様な血液細胞の存在が報告されているが、歯周ポケット内樹状細胞の成熟とRANK-RANKL系の関与も報告された。このため抗RANKL抗体が樹状細胞の機能障害を来たし顎骨壊死発症の一因となった可能性は否定できない。また血液内科の日常臨床では単球性白血病で歯肉浸潤が好発することから単球と歯肉との親和性は否定できない。これらを総合すると、単球・大食細胞系細胞の一員である破骨細胞に機能障害を起こし得るNCBPは、歯周ポケット内の単球・大食細胞系細胞の細胞障害を惹起し、このことが顎骨壊死の一因となる機序も検討の余地があると考えられる。最近顎骨壊死の動物実験モデルも報告され始めたことから、これらの系で、顎骨や歯周組織内の単球・大食細胞系細胞のNCBPによる細胞障害と顎骨壊死発症との関連を検討することが、次の顎骨壊死の機序検討のステップである可能性が考えられる。これらのモデルで顎骨壊死初期病変に対し、外部からの脂質添加で顎骨壊死の軽快が得られるならば顎骨壊死の新規治療に道を開く可能性が考えられる。今後更なる検討を続ける所存である。\n5 結論\n今回の検討により、NCBPは、破骨細胞のみならず、他の単球・大食細胞系細胞である、ヒト単芽球系白血病細胞株、ヒト末梢血由来CD14陽性細胞(ヒト単球)、ヒト末梢血CD14陽性細胞から誘導された樹状細胞相当細胞分画、ヒト末梢血CD14陽性細胞から誘導された大食細胞の4種の単球・大食細胞系細胞に、一部はRap-1αの脱プレニル化等small Gタンパク質のプレニル化阻害等を介し、細胞死を誘導することが確認された。今後顎骨壊死の機序解明を含めた臨床的意義を解析することが望まれる。", "subitem_description_type": "Abstract"}, {"subitem_description": "論文審査の結果の要旨\n窒素含有ビスフォスフォネート(NCBP)は、溶骨性病変を有する多発性骨髄腫や固形腫瘍の骨転移の際の骨関連事象を有意に減少させるが、一方NCBP長期投与例では、歯科口腔外科領域\nに感染病巣を有する症例を中心に顎骨壊死が発症することがある。NCBPの標的細胞の破骨細胞も歯周ポケットに存在する食細胞も単球・大食細胞系細胞が含まれることから、NCBP(主にインカドロネート使用)の単球・大食細胞系細胞に対する細胞死誘導効果を検討している。結果、NCBPは時間依存性に、また濃度依存性に単球系細胞株に細胞死を誘導し、アポトーシスの関与を示唆した。また、ヒト単球と単球から分化誘導された大食細胞および樹状細胞でもほぼ同様な細胞死誘導を確認している。これらのことから、単球・大食細胞系細胞の一員である破骨細胞に機能障害を起こしうるNCBPは、歯周ポケット内の単球・大食細胞系細胞の細胞障害を惹起し、それが顎骨壊死の一因となる機序が考えられることを導いている。\n今後は、さらに顎骨壊死の動物実験モデルによる顎骨壊死の機序の解析および単球系細胞の機能障害の他の疾患への関与の検討が予定される。\n以上より、本研究が学位論文にふさわしいものであることを、審査委員全員一致で確認した。\n試問の結果の要旨\n論文審査に際し、申請者は研究内容についてその背景、目的、方法、結果および考察について説明した。論文の総括、緒言には表れていない背景、臨床で実際に苦労している問題など詳細に説明があった。発表の骨格は整理されており、明確であった。しかし、図表に明確な表記が十分ではない点があり、実験方法の表記も十分ではなく、また一部考察の内容の追加が必要と考え、審査後に指摘をし、その結果理解しやすい表記に修正され、考察の内容も充実した。\n質疑応答は、正確かつ迅速に対応され、本研究分野に対し、長年の臨床経験を通した把握、広い知見と推察力を有することが確認された。今回の学位論文において、窒素含有ビスフォスフォネート(NCBP)による破骨細胞の機能障害のみではなく、他の単球・マクロファージ系細胞に対するアポトーシス誘導作用に焦点を当てたことがユニークであり、一方現時点での方法、結果の限界を冷静に把握していた。この研究の発展に関しても広い視野からの考察ができていた。\n以上、申請者の学識、研究能力は学位を授与するに十分値することを、審査委員全員一致で確認した。", 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インカドロネートによる、ヒト単球系細胞でのカスパーゼ活性化を伴う細胞死誘導に関する研究
https://jichi-ir.repo.nii.ac.jp/records/264
https://jichi-ir.repo.nii.ac.jp/records/26490edda8b-bbd9-41ca-99fd-ba5f6e44e8bc
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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【乙種】論文要旨及び審査結果_677 三輪 哲義氏 (190.1 kB)
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Item type | 一般雑誌記事 / Article(1) | |||||
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公開日 | 2013-11-07 | |||||
タイトル | ||||||
言語 | ja | |||||
タイトル | インカドロネートによる、ヒト単球系細胞でのカスパーゼ活性化を伴う細胞死誘導に関する研究 | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_6501 | |||||
資源タイプ | article | |||||
著者 |
三輪 , 哲義
× 三輪 , 哲義 |
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抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | 論文内容の要旨 1 研究目的 窒素含有ビスフォスフォネート(NCBP)は、溶骨性病変を有する多発性骨髄腫や固形腫瘍の骨転移の際の骨関連事象を有意に減少させる。一方NCBP長期投与例では、歯科口腔外科領域に歯周感染症等等の感染病巣を有する症例を中心に、一定頻度で顎骨壊死が発症する。NCBPの標的細胞の一つである破骨細胞も、歯周ポケットに存在する食細胞も単球・大食細胞系細胞が含まれることから、NCBP(主にインカドロネートIncaを用いた)が、単球・大食細胞系細胞に対する細胞死誘導効果を有するか否かに関し、機序の一端も含め解析した。 2 研究方法 ①ヒト末梢血由来CD14陽性細胞分画、②この分画にPMAを添加するかmacrophage SFM培地で培養し大食細胞に分化させた分画、③CD14陽性細胞分画をGM-CSF添加培地で培養すると共にLPSも添加しCD209等樹状細胞関連抗原が陽性化した分画(樹状細胞相当分画)、④ヒト単芽球系細胞株THP-1、及び⑤ヒト骨髄腫細胞株の5種の細胞分画を調整した。NCBPはパミドロネートやゾレドロン酸も用いたが、予備実験で3者で同様の細胞死誘導効果を認めたこと及びメバロン酸代謝障害活性がIncaがパミドロネートに劣らないとの報告から本研究には主にIncaを用いた。細胞死の一つのアポトーシス誘導はPI染色とAnnexin V解析を用いFCMで評価した。各分画へのNCBP添加後caspase-3,-4,-7に対する抗体を用いcaspaseの動態変動を検討した。またプレニル化Rap-1と非プレニル化Rap-1に対する特異抗体を用い、一部small G蛋白質の脱プレニル化を介しているかを解析した。 3 研究成果 NCBPは時間&濃度依存性に、(骨髄腫細胞株での細胞死誘導時より低濃度でも)単芽球系細胞株THP-1に、細胞死を誘導した。この細胞死はcaspase-3, -4, -7のcleavageを伴ったことからアポトーシスの関与が示唆された.ヒト骨髄から十分量の単芽球の分離が困難な為単芽球での検討は白血病細胞株を用いたが、非腫瘍性血球である、ヒト単球とこのnativeな単球から分化誘導された大食細胞及び樹状細胞でもほぼ同等な細胞死誘導が確認された。またTHP-1での細胞死誘導 はRap-1の脱プレニル化を伴っていた。この脱プレニル化を外部からのgeranylgeraniol(GGOH)やfarnesol(FOH)の添加で抑制すると細胞死が一部抑制された事から。これらの細胞での細胞死誘導の少なくとも一部はRap-1のプレニル化を介していることが確認できた。 4 考察 今回の検討でNCBP、特にIncaは単球・大食細胞系細胞に時間及び濃度依存性に細胞死を誘導することが確認できた。この細胞死誘導は一部はcaspase-3,4,7の活性化を伴っていたことから、アポトーシスを介している可能性が示唆された。しかし細胞死にはアポトーシス、ネクローシス、オートファジー等、多様な様式があり、またアポトーシスとネクローシスの両方を介する細胞死や、necroptosis等の機序も報告されていることから、厳密な細胞死の機序の解明には更なる解析が必要と考えられた。顎骨壊死の発症機序は2013年時点で不明である。一方顎骨壊死の病理像では感染性骨髄炎に矛盾しない所見やバイオフィルムの関与が確認されている。加えて遷延性歯周感染症保有症例での頻度高い発症が知られている。また最近骨塩減少性病変に対し、NCBPとは異なる薬理作用を示す抗RANKL抗体を投与しても、同様に遷延性歯周感染症保有症例での顎骨壊死の頻度高い発症が報告された。歯周ポケット内には単球・大食細胞系細胞、リンパ球、形質細胞、顆粒球等多様な血液細胞の存在が報告されているが、歯周ポケット内樹状細胞の成熟とRANK-RANKL系の関与も報告された。このため抗RANKL抗体が樹状細胞の機能障害を来たし顎骨壊死発症の一因となった可能性は否定できない。また血液内科の日常臨床では単球性白血病で歯肉浸潤が好発することから単球と歯肉との親和性は否定できない。これらを総合すると、単球・大食細胞系細胞の一員である破骨細胞に機能障害を起こし得るNCBPは、歯周ポケット内の単球・大食細胞系細胞の細胞障害を惹起し、このことが顎骨壊死の一因となる機序も検討の余地があると考えられる。最近顎骨壊死の動物実験モデルも報告され始めたことから、これらの系で、顎骨や歯周組織内の単球・大食細胞系細胞のNCBPによる細胞障害と顎骨壊死発症との関連を検討することが、次の顎骨壊死の機序検討のステップである可能性が考えられる。これらのモデルで顎骨壊死初期病変に対し、外部からの脂質添加で顎骨壊死の軽快が得られるならば顎骨壊死の新規治療に道を開く可能性が考えられる。今後更なる検討を続ける所存である。 5 結論 今回の検討により、NCBPは、破骨細胞のみならず、他の単球・大食細胞系細胞である、ヒト単芽球系白血病細胞株、ヒト末梢血由来CD14陽性細胞(ヒト単球)、ヒト末梢血CD14陽性細胞から誘導された樹状細胞相当細胞分画、ヒト末梢血CD14陽性細胞から誘導された大食細胞の4種の単球・大食細胞系細胞に、一部はRap-1αの脱プレニル化等small Gタンパク質のプレニル化阻害等を介し、細胞死を誘導することが確認された。今後顎骨壊死の機序解明を含めた臨床的意義を解析することが望まれる。 |
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抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | 論文審査の結果の要旨 窒素含有ビスフォスフォネート(NCBP)は、溶骨性病変を有する多発性骨髄腫や固形腫瘍の骨転移の際の骨関連事象を有意に減少させるが、一方NCBP長期投与例では、歯科口腔外科領域 に感染病巣を有する症例を中心に顎骨壊死が発症することがある。NCBPの標的細胞の破骨細胞も歯周ポケットに存在する食細胞も単球・大食細胞系細胞が含まれることから、NCBP(主にインカドロネート使用)の単球・大食細胞系細胞に対する細胞死誘導効果を検討している。結果、NCBPは時間依存性に、また濃度依存性に単球系細胞株に細胞死を誘導し、アポトーシスの関与を示唆した。また、ヒト単球と単球から分化誘導された大食細胞および樹状細胞でもほぼ同様な細胞死誘導を確認している。これらのことから、単球・大食細胞系細胞の一員である破骨細胞に機能障害を起こしうるNCBPは、歯周ポケット内の単球・大食細胞系細胞の細胞障害を惹起し、それが顎骨壊死の一因となる機序が考えられることを導いている。 今後は、さらに顎骨壊死の動物実験モデルによる顎骨壊死の機序の解析および単球系細胞の機能障害の他の疾患への関与の検討が予定される。 以上より、本研究が学位論文にふさわしいものであることを、審査委員全員一致で確認した。 試問の結果の要旨 論文審査に際し、申請者は研究内容についてその背景、目的、方法、結果および考察について説明した。論文の総括、緒言には表れていない背景、臨床で実際に苦労している問題など詳細に説明があった。発表の骨格は整理されており、明確であった。しかし、図表に明確な表記が十分ではない点があり、実験方法の表記も十分ではなく、また一部考察の内容の追加が必要と考え、審査後に指摘をし、その結果理解しやすい表記に修正され、考察の内容も充実した。 質疑応答は、正確かつ迅速に対応され、本研究分野に対し、長年の臨床経験を通した把握、広い知見と推察力を有することが確認された。今回の学位論文において、窒素含有ビスフォスフォネート(NCBP)による破骨細胞の機能障害のみではなく、他の単球・マクロファージ系細胞に対するアポトーシス誘導作用に焦点を当てたことがユニークであり、一方現時点での方法、結果の限界を冷静に把握していた。この研究の発展に関しても広い視野からの考察ができていた。 以上、申請者の学識、研究能力は学位を授与するに十分値することを、審査委員全員一致で確認した。 |